20

6月

2009

どこかの出版社が復刊してくれないかなあ、って話

 私がいた小学校には毎年一度学校が用意した推薦図書のリストから1冊本をもらえる、っていうイベントがありました。まあ、親が払ってたんでしょうけど、子供にしてみればなんか本がもらえるとしか思ってなかったんです。

 小五ぐらいだったと思うのですが、その推薦図書で出会った本が『雲取谷の少年忍者』でした(現在残念ながら絶版)。

 甲賀対伊賀。

 飛び交う手裏剣。

 炸裂する忍術。

 みたいな今でいうとマンガの『NARUTO』のような話を期待して選んだのですが、読んでみてとにかく驚いたのを覚えています。

 主人公である兄弟の父親がひもじさからたった一袋のわらび粉を盗んだ罪で村人から斬首される、という忍術のにの字もユニークのニの字もない冒頭に始まり、忍者の里で育てられた兄弟が大名の赤子を助けに行く、というようやく期待していた展開になったと思ったら、忍者より低い身分である下人が「誰か一人でも、今死んだイノの本当の名前を知っている奴がいるかっ? 生まれてから誰にも本当の名を呼ばれずに生きていく俺たちの気持ちがわかるかっ? 赤子の命と、イノの命と、二つにどんな差があるんだ(超絶うろ覚え台詞です)」とかなんとか小学生には重過ぎる言葉を投げかけてくる始末。

 ラストは主人公兄弟の弟から兄に送られた、「僕は誰とも争いたくない。仕方ないというけれど、日本中のみんなが一斉に侍に従うのをやめれば争いはなくなるんじゃないか。僕はまず、農民として暮らすことからはじめようと思う(空前絶後のうろ覚えです)」みたいな、小学生にはまず意味がよくわからない手紙で終わっていました。

 

 物語を楽しむだけでなく、まだふれたことのない言葉にふれる楽しさが読書にはあること。

 

 「雲取谷の少年忍者』は、そのことに初めて気づかせてくれた本でした。知らない言葉にふれること、それはつまり、他人の思考にふれることです。そんなおもしろいことってなかなかないし、だから私はいまだに本を読み続けているんだと思います。