土
17
10月
2009
清くなくてもいいので一票お願いします、の話
先日サイトの為の調べ物をしていて、原田宗典さんの『何者でもない』が絶版になっていることを知りました。
初めてその本を読んだのは、21歳の頃で、私はとある劇団で働いていました。数週間前に私はみんなに辞めることを告げていて、誰もいなくなった会社でなんとなく古本屋で買ったその本を読みはじめて。なんかずっと、泣きながら読んでいたことを覚えています。
辞めることをつげたとき、一番頼りにしていた先輩のYさんから、
「なんで辞めるの? 私たちのこと嫌い?」
と言われました。別に好き嫌いでを辞めたりはしないよ、と思ったけれど、Yさんらしいなとも思いました。
Yさんは思ったことを全部口にするひとでした。入社してしばらくすると、Yさんと喧嘩してやめた人間が多いという噂が耳に入りはじめ、もうしばらくする と、最低だなと思うようなひどい言葉をYさんがひとに投げかける場面に何度も遭遇するようになりました。私自身、Yさんとは何度も本気の口論をした記憶が あります。
嘘をつかないひとでした。
そんなひとがいること自体、信じられなかったし、Yさんでなければ、信じなかったと思います。私は本当にひどい嘘つきで、一番ひどかった高校生の頃なん かはもうほとんど病気の域に達してたぐらい、学校で話す言葉の十分の一ぐらいは誇張ではなく嘘をついていました。例えをひとつ出すと、『恥ずかしさ』とか 『見得』とか理由が感じられる嘘なら共感も多少できると思うんですが、「昨日夕飯なに食った? 」という質問にハンバーグ食べてたのに「カレー」って答え てました。今書いてて思いましたが、さっき『ほとんど病気の域』って書きましたが訂正させてください。病気です。がっつり、病です。
怒った顔をしているときは怒っていて、嬉しい顔をしているときは嬉しい、と信じることができること。
それがどれだけ安心なことかというのを教えてくれたのはYさんでした。
『何者でもない』で、バイトをしながら劇団で稽古を続ける主人公が女性に言われる台詞があります。
「まったくもうどいつもこいつも・・どうしてそうやって芝居なんかに縋りつくのかしらねえ。バカよ。こんな豊かな時代にさァ、たこ焼き屋でバイトして六畳一間に住んで、食パンの耳かなんか食べてさ。何がおもしろいのよ」
そのとおり。そのとおりだとは思っても、この言葉に私は頷くことができません。連絡は辞めて以来一度もとっていないですが、きっと、Yさんはまだ芝居の 世界で生きていると思います。どう考えても、社会人として暮らしていけるとは思えないからです。会社勤めなんか絶対無理でしょうし。
『何者でもない』の登場人物たちは、みなどこかしら当時の仲間たちに重なっていて、今でも客観的に読むことはできません。だから正直に言うとあまり自信はないんですが、ほんとうにいい本なので、図書館でもなんでも、一度読んでみてもらえればと思います。
もしも気に入ってくださったら方がいたら、『復刊ドットコム』へのリンクを貼っておくのでよろしければ投票お願いいたします。
http://www.fukkan.com/fk/index.html
